序章
あるひとつのテロルから
見るもの聞くもの、おれを責め、鈍りがちな復讐心に鞭をくれようというのか!
寝て食うだけ、生涯それしか仕事がないとなったら、人間とは一体なんだ?
畜生と何処が違う。
神から授かったこの窮まりない理性の力。
それあるがため、うしろを見、さきを見とおし、きっぱりした行動がとれる。
この能力、神に近き頭脳のひらめき、それを使うな、かびでもはやせ。
まさか、それが神意ではあるまい。
それを、俺は、畜生の性なしか、
それとも、腰のさだまらぬ小心者のつね、
あまり物事の先の先まで考えすぎて身うごき出来ぬのか−
ふむ、思慮というやつは、四分の一が知恵で、あとの四分の三は卑怯者−
おれにもわからない、
「これだけはやってのけねば」と、
ただ口さきだけで言い暮らしている自分の気持ちが。
『
ハムレット
』福田恆在 訳
深夜未明。
一台のミニバンがセンターラインをわりながらスピードを上げ走っていた。
そして、信号が赤の交差点をスピードは衰えることなく車はそのまま走り抜けた。
車は更にスピードを上げ、反対車線を斜めに横切らせた。
其処には何の躊躇いもないようであった。
その先は茶色い四階建てのあるひとつのビルがあった。
車のスピードは衰えなかった。
爆炎が茶色いビルのエントランス部であがった・・・
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